書にいたる病

活字中毒者の読書記録

幻想小説

『自転車泥棒』呉明益 | 【感想・ネタバレなし】あの自転車はどこに消えたのか、父の自転車を追う旅はあの戦争の密林の奥地へと入っていく

今日読んだのは、呉明益『自転車泥棒』です。 2018年国際ブッカー賞候補作となった作品らしく、多言語的で幻想的な独特の読み応えがありました。 私は文庫で購入したのですが、挿入される自転車の精緻なイラストが美しく、これだけでも購入の価値があると思…

『鏡のなかのアジア』谷崎由依 | 【感想・ネタバレなし】チベット、台湾、京都、インド、クアラルンプール、幻想と現実のアジアを言葉の魔力が繋ぐ

今日読んだのは、 谷崎由依『鏡のなかのアジア』です。 チベット、台湾、京都、コーチン、クアラルンプール、アジアの土地を舞台とした5つの短編が収録されています。 どの物語もアジアのそれぞれの都市の空気が匂いたつようで、幻想と現実の間でくらくらす…

『透明な夜の香り』千早茜 | 【感想・ネタバレなし】渡辺淳一文学賞受賞、古い洋館に棲む調香師が暴くヒトのどうしようもない欲望と秘密

今回ご紹介するのは、 千早茜『透明な夜の香り』です。 生々しく官能的かつ荒々しい著者の文章にすっかり魅了されてしまい最近乱読しています。 食の描写が特に素晴らしい著者ですが、第6回渡辺淳一文学賞受賞作の本書は官能的で荒々しい「香り」についての…

『追想五断章 』米澤穂信 | 【感想・ネタバレなし】五つの結末の無い物語が、変貌する真実を語る

米澤穂信『追想五断章 』のあらすじと読書感想を紹介します。平成4年の時代描写と主人公の心情と5つのリドルストーリーにまつわる謎と過去の未解決事件が呼応し合う贅沢な構成の小説です。

『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信 | 【感想・ネタバレなし】最後の一行が密やかな衝撃をもたらす、物語の夢想に魅せられた全ての者に贈られる連作ミステリ

米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』のあらすじと読書感想を紹介します。最後の一文がもたらす衝撃にこだわった連作ミステリ。いつしか、密やかで罪深い世界に引きこまれる。

『迷宮百年の睡魔 LABYRINTH IN ARM OF MORPHEUS』森博嗣 | 【感想・ネタバレなし】 人間の誇りは、尊厳は、躰と頭脳どちらに宿るのか。美しき女王が再び現れる。百年シリーズの二作目。

森博嗣『迷宮百年の睡魔 』のあらすじとネタバレ感想を書いていきます。 百年シリーズの2作目にして、再び現れる女王とミチルの人間の誇りを巡る尽きぬ議論。神々しいまでの近未来ミステリでした。

『ファミリーポートレイト』桜庭一樹 | 【感想】母と娘の呪いのような愛憎、物語ることの渇望

桜庭一樹『ファミリーポートレイト』のあらすじと読書感想を紹介します。最後のシーンは、この世の母と娘の幸福な、そして失われた一瞬の時間に、祈りを捧げたくなるものでした。

『女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN』森博嗣 | 【感想・ネタバレなし】女王が統治する死が存在しない街で、人間の尊厳の在処を宣言される

森博嗣『女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN』のあらすじと読書感想を紹介します。死が限りなく薄まった未来で、生とはどんな価値を持つかを論じた今読んでも新しいミステリでした。

『青年のための読書クラブ』桜庭一樹 【感想・ネタバレなし】乙女よ、青年たるものよ、永遠であれ!

桜庭一樹『青年のための読書クラブ』のあらすじと読書感想を紹介します。乙女よ、青年たるものよ、永遠であれ!

『輝ける鼻のどんぐ』エドワード ・リア(文)、エドワード ・ゴーリー(絵) | 【感想】恋の闇路を独り行く、輝ける鼻を持ち男のナンセンスで哀切な物語

絵本『輝ける鼻のどんぐ』のあらすじと読書感想を紹介します。恋の狂気を孤独に歩む男と、ゴーリーの精密な線画が格調高い文学性を感じさせる大人のための絵本です。

『かきがら』小池昌代 | 【感想】かきがら、がらがら。ざらざらとした言葉と生命の生温かい手触り

小池昌代『かきがら』のあらすじと読書感想を紹介します。美しい装丁にも注目したい1冊です。