書にいたる病

活字中毒者の読書記録

恋愛

『エチュード春一番 第三曲 幻想組曲』荻原規子 | 【感想・ネタバレなし】平将門の物語を蝦夷の少女の視線で再構築する。シリーズ第3巻。

今日読んだのは、荻原規子『エチュード春一番 第三曲 幻想組曲 [狼]』です。 八百万の神の一柱を名乗る白黒のパピヨン・”モノクロ”と同居する女子大生・美綾の生活を描いたファンタジーシリーズの第3巻です。 1巻2巻の感想はこちら↓ rukoo.hatenablog.com ru…

『俗・偽恋愛小説家』森晶麿 |【感想・ネタバレなし】恋愛童話に隠された秘密ふたたび。偽恋愛小説家・夢宮と担当編集・月子との関係にも変化が

今日読んだのは、森晶麿『俗・偽恋愛小説家』です。 底意地の悪いイケメン小説家・夢宮と新米編集者・月子のコンビが有名な恋愛童話になぞらえた事件を解決していく、というシリーズの第2作目になります。 ライトなストーリーと、キャラクターの魅力、モチー…

『偽恋愛小説家』森晶麿 |【感想・ネタバレなし】あの恋愛童話に隠された秘密とは? シニカルな恋愛(?)小説家と新米編集者が挑む恋にまつわる難事件

今日読んだのは、森晶麿『偽恋愛小説家』です。 華々しくデビューした恋愛小説家にニセモノ疑惑勃発!? 新米編集者の月子は疑惑の真偽を確かめようと奔走。 しかも、身の回りで次々、事件が起こるし、小説家・夢野の思わせぶりな態度も気になるし……。 とい…

『エチュード春一番 第二曲 三日月のボレロ』荻原規子 | 【感想・ネタバレなし】思いやりと知性の在り方に思いをはせる夏。シリーズ第2巻。

今日読んだのは、荻原規子『エチュード春一番 第二曲 三日月のボレロ』です。 八百万の神の一柱を名乗る白黒のパピヨン・”モノクロ”と同居する女子大生・美綾の生活を描いたファンタジーシリーズの第2巻です。 1巻の感想はこちら↓ rukoo.hatenablog.com 1巻…

『エチュード春一番 第一曲 小犬のプレリュード』荻原規子 | 【感想・ネタバレなし】春、八百万の神を名乗る犬と出会った。不安と期待に揺れる新生活と幼い日々のほろ苦い後悔が交錯するちょっと不思議なファンタジー

今日読んだのは、荻原規子『エチュード春一番 第一曲 小犬のプレリュード』です。 今作は、八百万の神と名乗る犬(!?)と同居することになった女子大生という設定で、神との同居という非日常と大学生の生活という日常の描写、両方を楽しめると期待が膨らみ…

『草原のコック・オー・ヴァン 高原カフェ日誌II 』柴田よしき | 【感想・ネタバレなし】高原のカフェの秋と冬。一筋縄ではいかない人生にもやがて春が来る

今日読んだのは、柴田よしき『草原のコック・オー・ヴァン 高原カフェ日誌II』です。 こちらは、高原のカフェを舞台としたシリーズものの2作目にあたります。 1作目の感想はこちら rukoo.hatenablog.com 結婚に失敗し傷を負った主人公・奈穂は、東京から脱出…

『揺籠のアディポクル』市川憂人 | 【感想・ネタバレなし】『ジェリーフィッシュは凍らない』作者が放つウイルスが蔓延する世界での切ないボーイミーツガールミステリ

今日読んだのは、市川憂人『揺籠のアディポクル』です。 デビュー作『ジェリーフィッシュは凍らない』から続くマリア&漣シリーズは、その怜悧かつ精緻なトリックと個性豊かかつ的確なキャラクター描写で、大好きなミステリシリーズの一つなのですが、シリー…

芥川賞を全作読んでみよう第4回その2『地中海』冨澤有爲男 |【感想】地中海の朝焼けに溶けていく二人の男の友情。純文学とは思えないドラマティックさにドキドキが止まらない

芥川賞を全作読んでみよう第4回その2、冨澤有爲男『地中海』をご紹介します。 芥川龍之介賞について 第四回芥川賞委員 第四回受賞作・候補作(昭和11年・1936年下半期) 同時受賞の『普賢』について 受賞作『地中海』のあらすじ 感想 端正な筆致による美しい…

『i』西加奈子 | 【感想・ネタバレなし】この残酷な世界にアイは存在するのか。生きることへの祝福に満ちた物語

今日読んだのは、 西加奈子『i』です。 「この世界にアイは存在しません。」 アメリカ人の父と日本人の母との間に養子として育てられたアイは、その繊細さと聡明さで、自分の”恵まれた”境遇に罪悪感を抱きながら育ちます。 世界中で沢山の人が苦しく辛い思い…

『パンダより恋が苦手な私たち』瀬那和章 | 【感想・ネタバレなし】恋愛に足りないのは野性? 恋も仕事もボロボロの編集者が挑む動物×恋愛コラム!

今日読んだのは、 瀬那和章『パンダより恋が苦手な私たち』です。 「動物奇想天外」と「生き物地球紀行」に夢中だった幼少期だったので、タイトルから思わず手に取ってしまいました。 ファッション誌志望だったのにカルチャー雑誌の編集にまわされ、いまいち…

『アムリタ』吉本ばなな | 【感想・ネタバレなし】生きることはおいしい水をごくごく飲むこと

今日読んだのは、吉本ばなな『アムリタ』です。 何かのあとがきで、著者自身はこの作品をあまり気に入っていないというようなことを書いていた記憶があるのですが、私はすごく気に入りました。 母親が離婚したり、父親の違う弟がいたり、妹が自殺したり、階…

『ガーデン』千早茜 | 【感想・ネタバレなし】自分だけの密やかな庭に引きこもる植物系男子の生態

今回ご紹介するのは、千早茜 『ガーデン』です。 千早茜さんの小説は、もしかして自分のことを書かれてる?と思ってしまうほど、水が合うところがあります。 特に『男ともだち』などは、どこかで監視されているんじゃないかと思うくらい、ぴったり自分に嵌っ…

『私の夫は冷凍庫に眠っている』八月美咲 | 【感想・ネタバレなし】殺したはずの夫が帰ってきた、緊迫感に耐え切れないサスペンス

今日読んだのは、八月美咲『私の夫は冷凍庫に眠っている』です。 人気小説サイト「エブリスタ」発のラブ・サスペンスで、ドラマ化、漫画化もしている注目作です。 www.tv-tokyo.co.jp 殺した夫を冷凍庫に隠したはずなのに、その夫が帰ってきた!という衝撃の…

『盤上に君はもういない』綾崎隼 | 【感想・ネタバレなし】もう一度だけあなたと指したい、二人の女性が挑戦する前人未到の女性のプロ棋士への闘い

今日読んだのは、綾崎隼『盤上に君はもういない』です。 史上初の女性プロ棋士を目指す二人の女性の熱い闘いとその裏に隠された切ない過去を描いた小説です。 "女流棋士"と"女性プロ棋士"は全く違うということを、今作で、はじめて知りました。 男女関係なく…

『私は古書店勤めの退屈な女』中居真麻 | 【感想】自分で退屈な女と言う女は大抵退屈じゃない

中居真麻『私は古書店勤めの退屈な女』のあらすじと感想を紹介します。 夫の上司と泥沼不倫中のシニカルなヒロインとゆる~いおっちゃんの、古書店での不思議で愛しい日々。

『さんかく』千早茜 | 【感想】男女が一緒にいることには理由がいるのだろうか、食べることが浮き彫りにする男女の相克

千早茜『さんかく』のあらすじと感想を紹介します。大学教授とパフェを食べに行く場面が印象的。食べたいように生きたいようにすればいいという潔い態度が心地よい。

『チーズと塩と豆と』角田光代、井上荒野、森絵都、江國香織 | 【感想】4人の直木賞作家がヨーロッパンの都市を舞台に描く愛と味覚のアンソロジー

今日読んだのは、4人の直木賞作家のアンソロジー 『チーズと塩と豆と』です。 著者は、角田光代、井上荒野、森絵都、江國香織という錚々たる面々。 角田光代は、スペインのバスク。 井上荒野は、イタリアのピエモンテ。 森絵都は、フランスのブルターニュ。 …

『僕たちの正義』平沼正樹 | 【感想・ネタバレ】死んで当然の人間は存在するのか、一人の少女の死から溢れる人間の闇とは

平沼正樹『僕たちの正義』のあらすじと読書感想を紹介します。臨床心理士の主人公が背負う深い業に、自分自身の倫理観が揺らぎそうになりました。

『ヒールをぬいでラーメンを』栗山圭介 | 【感想】失恋・失職のどん底OLがラーメン道をひた走る。勇気づけられるお仕事小説。

栗山圭介『ヒールをぬいでラーメンを』のあらすじと読書感想を紹介します。飲食店経営だけでなく、夢にチャレンジする全ての人に贈られた元気いっぱいの小説でした。

『輝ける鼻のどんぐ』エドワード ・リア(文)、エドワード ・ゴーリー(絵) | 【感想】恋の闇路を独り行く、輝ける鼻を持ち男のナンセンスで哀切な物語

絵本『輝ける鼻のどんぐ』のあらすじと読書感想を紹介します。恋の狂気を孤独に歩む男と、ゴーリーの精密な線画が格調高い文学性を感じさせる大人のための絵本です。

『神様のボート 』江國香織 | 【感想】恋に狂った母親と娘の放浪の日々、母娘の蜜月とその終焉までの遥かな旅路

江國香織『神様のボート 』のあらすじと読書感想を紹介します。母と娘の幸せな時間とそれが終わるまでの長い旅路を静かに描く物語です。

『ニムロッド』上田岳弘 | 【感想】 仮想通貨採掘を背景に描かれる虚無的な人間関係

上田岳弘『ニムロッド』のあらすじと読書感想を紹介します。 都会的で心地よい虚無感を感じる文体です。