書にいたる病

活字中毒者の読書記録

『花のベッドでひるねして』よしもとばなな |【感想】どうしようもなく悪意にさらされるときに読むお話

 

よしもとばななさんは大好きな小説家で、どちらかといえば吉本ばなな名義のときのお話のほうが好きなのですが、今回はこちらの花のベッドでひるねしてを紹介します。

優しい両親と叔父、ちょっと不思議な力を持つ元ヒッピーの祖父に育てられた主人公の幹ちゃんは実は捨て子。可愛がってくれた叔父と祖父はもう亡くなってしまい、今は、実家のB&Bで働いている。たまに悪いことも起こるけれど、自分のペースを崩さなければ、幸福は常にそこにある。

おすすめポイント 

・とにかく癒されたい方

・最近なんとなく上手くいかない方

・のんびりした話が読みたい方

 

主人公の魅力

このお話の魅力はずばり、主人公の幹ちゃんがかわいい!

捨て子で、大好きな祖父と叔父は数年前亡くなっていて、お母さんは最近自動車事故で怪我をし、と大変なことがいっぱいなのに、常に明るく前向き。

お話全体がふわっと穏やかな雰囲気で満たされています。

あと、実家のB&Bで出される樽ビールと、お母さん特製のフィッシュアンドチップスが何とも美味しそう。

もちろん、いい人がただやみくもに得をするパレアナ的話ではなく、怪奇現象めいた不気味な出来事と人の悪意が幹ちゃんの日常を何度も脅かそうとします。

「花のベッドでひるね」するように生きている幹ちゃんも、馬鹿ではないので、村の人が内心自分をどう思っているか、きちんと理解しています。

「あの子は捨て子、変わった子、似てない子。やたらに村をうろうろしていて、いろんなものをじっと見ている底知れなくて気味悪い子。(中略)おじいさんに気に入られて、おじいさんの言うなりの両親にも受け入れられて、捨て子のくせにちゃっかり家のあとをついで、うまくしたもんだね。あんなふうに生きていけたらいいけど、人生はもっとたいへんなものなんだから、あんなふうに生きられるはずがない。いつかひどいしっぺ返しがくるにちがいないよ。」 

 こんな耳をふさぎたくなるような声を幹ちゃんは、花のベッドでひるねするように生きるのは楽なことではないけれど、そう決めたのだからしょうがない、さらりと受け流します。

私は、物事の白黒を執拗に決めたがる所があり、同じ環境だったら、幹ちゃんのように村の人と仲良くなれず、丘の上で一人引きこもって家族とだけ関わって生活してただろうな、と思います。

というか、どちらかというと明るくてかわいい捨て子の幹ちゃんを横目で見て、コソコソ噂話する近所のおばさんの立ち位置かも。暗いな~。

でも、人間のしょうもない部分(悪い部分ではない)、どうしようもない部分、すべて含めて、まあいっか的気分になれるお話でした。

まあまあ、薄いので、さらっと読めてしまうことも魅力。おすすめです。

 

余談ですが、B&Bというものを最初全然知らなかったのですが、朝食と宿泊ができる海外の家庭的なホテルのようなものなんですね。

イギリスのB&Bにいつかイギリス文学好きの母親と行きたいな~。パブでビール飲みたい。フィッシュアンドチップス食べたい。ということで今回はここで終わり。

 

今回ご紹介した本はこちら

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