『リストランテ アモーレ』井上荒野|【感想】愛と食欲に耽溺する読書
食べ物が出てくる話が好きだ。
というか、作家には食べることは好きな人が多い、とどこかのあとがきで読んだことがある。(お酒が好きな人が多いとも書いてあった)
本書『リストランテ アモーレ』では、姉弟が経営するレストラン「アモーレ」を取り巻く人間模様が描かれる。
まず、出てくるイタリア料理が洒落ていてかつ本気で美味しそう。
特に、生のポルチーニ茸について、さりげなくも無視できない熱量で描写されていて、これは作者自身がどこかで食して大いに感動したのでは、と思ってしまった。
お店を切り盛りする姉弟の人柄も何とも良い。
姉は婚約者のいる男性を不毛にも懸想し続けていて、そのことを誰にもばれていないと思っている。もちろん、周囲にはバレバレ。
弟は、店にくる女を食べまくっているくせに、姉の恋愛模様に関してはオロオロと見守るばかりで役に立たない。
登場人物皆が、(一人を除き)大いに食べ、大いに恋愛する様は、江國香織の小説を思わせる。まるで、愛することと食べることは同じだと言わんばかり。
いや~な感じの婚約者の女が、食事に余り興味が持てないタイプである、という対比が、あからさますぎて逆によい。彼女が、最後、きっぱりとワインを飲みに行くシーンは爽やかで、作中では憎まれ役の彼女だけど、現実にいたら、結構仲良くなれそう、と思った。
軽い連作ドラマを見るような気持ちで読めるので、あまりどろどろしていない恋愛小説を読みたいときにおすすめです。
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