書にいたる病

活字中毒者の読書記録

『下戸の夜』本の雑誌編集部 下戸班編|【感想】下戸は夜をどう歩いているのか

お酒が飲めない人のイメージ

お酒が飲めない人って、飲み会をどう思っているの、というのが長年の疑問でした。

というのも私自身は人づきあい苦手のくせに、飲み会好き酒好きだからです。

私の中の、下戸の人のイメージは、飲み会中つまんなそうにウーロン茶飲んでて、

早く帰りたがってて、割り勘を実は嫌がっている(だってお酒飲んでないから)という

ものでした。これ、酒飲みの勝手なひがみですよね。

本当は一緒に楽しみたいけど、向こうはお酒飲めないし、本当に楽しんでくれてるのかな、面倒くさいと思ってるのかな、ねえねえ、私のことどう思ってる? と絡みたくなる。

どう思ってるって、酔っ払いだと思ってるに決まってますよね。あほか。

 

下戸への疑問を徹底的に解明

さて、本書『下戸の夜ではそんな下戸の夜を徹底的に解明してくれます。

様々な職種の下戸たちに、飲み会って本当は苦手なの?、私たち酔っ払いのこと本音ではどう思ってるの?、とインタビューしていきます。

意外に意外や、飲み会が嫌いではない、という下戸も一定数いらっしゃることが判明。

これは嬉しいですね。

酔っ払っているフリをして、周囲を観察し楽しんでいる方や、その場の雰囲気を楽しんでいる方、なかには、ノンアルコールビールで酔えるというツワモノも。

ノンアルコールビール

これか、ゾンビと互角に渡り合うための最終兵器は。

ためしに飲んでみたらアルコールフリーなのに酔ったのである。

んなアホな、と読者は思うだろう。だがこのとき私は気づいたのだ。

酒に酔うには、必ずしもアルコールの力を借りる必要はなく、絶対に

酔っ払ってみせるという強い意志さえあれば可能だということに。(p38)

 んなアホな、ですよね

ただ、確かドイツでは、ノンアルコール飲料でもアルコール飲料を飲んだときと同様の効果が得られるという調査結果があったようななかったような。出展不明でお願いします。

こう聞くと、安心して、飲めない人の前でもどんちゃんやりたくなりますが、

もちろん耳にいた~いお話も。

(ベテラン営業下戸対談より)

帰りは必ず、座布団も全部ひっくり返して確認して。でもさ、あれだけやっても誰も「お疲れさまでした」とか言ってくれないよね。みんな酔ってるから。

(中略)

我々はじっと見てますからね。観察していますよ。

全部覚えてますよ。手癖悪い人、暴言暴挙。

本当、身に覚えがありすぎて、ぐさぐさ来ます。

きっと、酔っている間失礼なこと沢山してるけど、優しいから見逃してくれてるんだろーなー。

知らない間に清算して、割り勘して、タクシー呼んで、介抱して、なんならお店の人に謝ってくれて、本当にありがとうございます。

ただし、自分への反省をさておき、下戸でも営業マン全然できる。仕事にお酒は関係ないよ!、と太鼓判を押してくれているのは大変心強いのではないでしょうか。

やっぱり、酔っ払いの友情は結ぶのも切れるのも早い、ということでしょうか。

 

酔っ払いへのあこがれ

あまりはっきりとは、とりあげられてはいなかったですが、飲める人への憧れみたいなものもそこかしこに見え隠れしている。

例えば、ノンアルコール飲料のメニューの載り方が「おこさま」のようであったり、

仲良くなった人に「今度飲みに行きましょう!」と元気よく誘われたときなど。

確かに、せっかくノリよく誘ってくれた人に「あ、僕飲めないんで」と返すのは、ちょっと哀しい。

かといって、「○○さん、飲めないんですよね、お昼集まりましょう!」とか気を使われるのも、私だったらやだな。

小学生のとき、姉の友達に混じって遊ぶとき、「まだ小さいから」と勝手にハンデつけられたときのような気持がする。

こっちはハンデなんかいらないんだよー!

攻殻機動隊みたいに、アルコールを一瞬で体から分解できるようになれば、下戸とか酔っ払いとかいう話もなくなるのかな。

 

ということは、下戸の夜が気になる酒好きのあなた、自分も下戸で共感したいあなた、新しい夜の過ごし方を模索したいあなた、ぜひぜひおすすめです。

今回ご紹介した本はこちら