『あなたの人生、片づけます』垣谷美雨 | 【感想・ネタバレ】汚部屋の住人にも人生がある、片付け屋・大葉十萬里が教える人生の片づけ方
今日読んだのは、、垣谷美雨『あなたの人生、片づけます』です。
そういえば、学生の頃、片付けが苦手で半ゴミ屋敷みたいなアパートに住んでました。
母親が連絡せず遊びに来ちゃって、アホみたいに叱られて恥ずかしくて、それ以降、まあまあ掃除するようになりました。えへへ。
ただそれ以来、ゴミ部屋を掃除するブログとか好きになりました。
ビフォーアフターを見るのが楽しいんですよね。角度変えたらまだ全然汚かったりして。
そういえば、あるブログで物凄いゴミ部屋を掃除したら小銭がなぜか大量に出てきて、最終的に3万円分くらい出てきた、みたいな話がありました。
もう、めちゃくちゃ自分の部屋、掃除しましたよ。お金出てこないかと思って。
さて、本書 、垣谷美雨『あなたの人生片づけます』は、汚部屋に住んでいる人は、なぜその状況に至ったか、という部屋に住む人間の心情・背景に焦点を当てた短編集です。
どんな部屋でも住んでいるのは、生きている人間で、見栄や誰にも言えない悲しみ、苦しみ、寂しさが部屋の形をして表出する、そんなお話でした。
以下、感想など書いていきます。
あらすじ
おすすめポイント
・部屋を片付けたくなります
・汚部屋に住んでいるのは、だらしがない人、という固定観念が崩れます
以下、感想を書いていきます。
ゴミ部屋・汚部屋は千差万別
一口にゴミ部屋・汚部屋といって、住んでいる人によって、その形はさまざまに違います。ちょっと整理してみます
ケース1の社内不倫をしているOL春花の部屋は、服や食器、靴、文房具など様々なモノにあふれ、しかも、ほとんど掃除しないのでほこりまみれ、ゴミも何週間も出していません。ひえ~。
ケース2の妻に先立たれた老人展蔵の部屋は、一見片付いていますが、それは近くに住んでいる娘の風味子が毎日家事をしに来てくれるからです。自分では何もできないうえ、妻の遺品整理もしていません。
ケース3の地方の資産家の老婦人泳子の屋敷も一見片付いた家です。本人も、自分はちゃんと主婦としてやっている、と自信を持っていますが、それは大きな屋敷で収納が多いだけで、実際はモノに溢れ切っています。戦争を体験した老婦人は、モノを捨てることに大変な抵抗を見せます。また、醤油やラップなど日用品を生きている間に使いきれないほど、買い置きしています。
ケース4の公務員宿舎に住む主婦麻実子の問題は深刻です。家族がいるにも関わらず、マンションの一室は荒れ切っており、2人の娘も荒み切っています。しかし、そのマンションには一室だけ完璧に綺麗に保たれている部屋があるのです。なぜ、その部屋だけ綺麗にしているのか。
部屋が汚くなる、モノが溜め込まれている、という問題の真の原因は住んでいる人の心に何かしら問題があるから、ということが見えてきます。
特にケース4の荒れた部屋と家族の中に一室だけ綺麗に保たれた部屋がある、病的な状況は読む人をぞくりとさせます。
片づけ屋・大葉十萬里の片付け方
片づけ屋・大葉十萬里は、時に無神経なほどズケズケと問題を指摘し、住人を汚部屋となった真の原因と向き合わせます。
最近は面と向かって言ってくれる人がいなくなりました。いつの間にか、みんな相手の機嫌を損ねないことしか言わなくなった。誰だって悪者になりたくないですからね。でも、恨まれてもいいから本当のことを言ってあげるのが本当の親切ではないでしょうか。(p89)
大葉十萬里により、OL春花は男にも友人にも都合よく利用されている惨めな自分と向き合わされ、老婦人泳子は娘にも息子にも孫にも捨てられたと思っている自分と、強引に向き合わされます。それはとても辛いことです。
そして、ケース4の主婦麻実子が向き合わなければならなかった問題は、他のどの問題より向きうことが辛い、深い絶望でした。
でも、春花は、惨めな自分を認めることで男とも友人とも距離を置くことができ、泳子は、子どもたちが郷里に戻ってこないからといって、自分が見捨てられたわけではないことを知ります。
目を背けてきた問題に向き合うことは確かに痛い、痛いけれど、向き合えば、解決する問題もある。
このお話はそういうメッセージを贈ってくれている気がします。
今回ご紹介した本はこちら