書にいたる病

活字中毒者の読書記録

『いいからしばらく黙ってろ!』竹宮ゆゆこ | 【感想・ネタバレ】荒々しく純粋に野蛮に生きろ! 私たちは、バーバリアン・スキル!

今日読んだのは、、竹宮ゆゆこいいからしばらく黙ってろ!』です。

かわいらしい装丁と過激なタイトルの対比に惹かれて、ジャケ買いしたのですが、後から調べましたら、作者の竹宮ゆゆこさんは、ライトノベル畑出身で、人気タイトル『とらドラ!』を執筆されたすごい方だそうですね。

本書『いいからしばらく黙ってろ!』でも、ライトノベル出身の方だからか、登場人物のキャラクターがすごく立っていて、面白かったです。

さて、あらすじと感想などご紹介していきます。

あらすじ

地方企業の経営者の両親のもと、双子の姉兄、双子の弟妹に挟まれて生まれた’’真ん中っこ’’の富士は、ずっと周囲の調整役をしながら生きていた。ところが、大学を卒業する今、彼女は人生のどん底にいた。友人も、婚約者も、就職先も、住む場所も失った富士は、弱小劇団に調整役の才能を見込まれスカウトされる。そこは、社会のはみ出し者が集うカオス渦巻く場所だった!

おすすめポイント 

・地道な人間が報われるストーリーが好きな方におすすめです。

・富士が劇団の様々な問題を、自分なりに解決しようと努力する様が見所です。

 

注意! ここからネタバレします

ハチャメチャな兄姉弟妹に囲まれた主人公・富士

本書『いいからしばらく黙ってろ!』の見所は、主人公富士が弱小劇団「バーバリアン・スキル」の抱える問題を次々と解決していく爽快さにあると思います。

富士は、上を双子の姉兄、下を双子の弟妹に挟まれた''真ん中っこ''です。しかも、この2組の双子は、それぞれがハチャメチャな性格で、多忙な両親は、上下の双子の面倒をすっかり富士に押し付けてしまっています。

何かとトラブルを起こす二組の双子の相手をしてきたせいで、富士はトラブルやカオスな状況に出会うと、自分が何とかしなくては、とつい出しゃばってしまうのです。

富士がなりいきでスタッフを務めることとなる、弱小劇団「バーバリアン・スキル」は、まさに彼女の大好物(?)なカオス状態にあります。

演劇への愛だけで実務能力に欠くリーダー・南野にまとまりのないメンバー、加えて、新規メンバーの大量脱退、唯一のまとめ役・樋尾は連絡が取れず、のしかかる資金難。

それでも、次の公演を成立させなければ劇団の存続も危うい!

巻き込まれるように、劇団に飛び込んだ富士は、ふりかかる数々のトラブルを懸命に乗り越えるうち、彼女自身も新しい力に目覚めていきます。

それは、自分の中身をさらけ出すことだ。

勇気をもって、自分を表現することだ。 

冒頭、婚約破棄された富士は卒業式後の宴会の場で、みんなが羨ましい、自分なんか人生のどん底だ、とこぼし、その場にいた人間の逆鱗に触れます。

結局、親が裕福であることで、就職や生活に関する心配がないことが、日々、懸命に就職活動に明け暮れた学友からどう見えていたか、富士は無自覚で無神経だったからです。

生きる力にどこか欠けていた富士、劇団メンバーの演劇に対する嵐のような情熱に触れ、自分自身も、荒々しく純粋で野蛮なまで生きる技術、バーバリアン・スキルを獲得していきます。

そんな彼女の最後の叫びは、爽やかな風となって読者の胸に響きます。

「いいからしばらく黙ってろ!」

今回ご紹介した本はこちら

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