『デス・コレクターズ』ジャック・カーリイ | 【感想・ネタバレなし】カーソン・ライダーシリーズ第2作。人間の底知れない欲望が招くおぞましい真相とは
今日読んだのは、ジャック・カーリイ『デス・コレクターズ』です。
シリアルキラーを兄に持つ若き刑事・カーソン・ライダーの活躍を描いたシリーズ2作目です。
海外刑事ドラマを見ているかのような映像を感じさせる描写と、殺人鬼の兄に助言を求めに行く、というミステリ好きにはソワっとくる設定が魅力です。
30年前のある事件の真相が今になって牙を剥く、という構成が、大好きな海外ドラマ『コールド・ケース』を思わせてワクワクしました。
前作では狂気剝き出しだった兄・ジェレミーが見せるちょっと人間臭い一面も見どころです。
それでは、あらすじと感想を書いていきます。
あらすじ
異常犯罪専門の刑事、”僕”ことカーソン・ライダーは事件が、30年前殺された連続殺人鬼の遺した絵画と関係があることを突き止める。
しかし、絵画を送りつけられた者たちが、次々と疾走、殺害されていく。
カーソンは、殺人鬼ゆかり品を収集する《
おすすめポイント
・”兄弟、家族の確執”みたいな話にピンとくる方におすすめです。
・海外刑事ドラマが好きな方におすすめです。
前作からの変化
前作でガールフレンドになった病理学者・アヴァがあっさり解雇されて、新しいガールフレンド・ディーディーにすげかわったことに驚きました。
ええ~、結構アヴァ、好きだったのに……。
でも、そんな読者の声を兄・ジェレミーが代弁してくれました。
「ディーディー? ディーディーってなんだ? この雌犬は何者だ? アヴァはどこだ? 俺のかわいらしい小さなナイチンゲールは?」
しかしカーソンは女性にもてるな~と感心しました。
一歩間違うとモテて仕事できるイヤミったらしい奴なのですが、ハリーという穏健で思慮深い相棒がいるおかげイヤミさが緩和されている、と思います。
殺人鬼の兄・ジェレミー
また、前作では狂気剝き出しで如何にも”殺人鬼”だった兄のジェレミーは、ちらちら人間らしい一面をのぞかせます。
特にカーソンへの連絡手段である携帯を取られそうになって渋々従う場面は、ムスっとしてるところが目に浮かぶようで笑えました。
また、弟の写真を持っていなくて悲しんでいたことや、父親を殺したのは弟を守るためだったことが強調され、”理解不能な殺人鬼”、から”手に負えない衝動を持った小さな子ども”へと印象が変化しました。
続くシリーズで、カーソンとジェレミーの関係にどんな変化が訪れるか楽しみです。
《蒐集家(デス・コレクターズ)》
本書では、有名な殺人鬼にゆかりのある品々、実際に殺人に使われた凶器、血のついた衣服、などを収集するコレクターの世界が紹介されます。
実際、殺人鬼という存在はどこか人を惹きつけるものがあるようで、有名な連続殺人犯にラブレターやファンレターを送る人も現実にいるそうです。
その心理については、私自身は、健全とも不健全とも思わないのですが(バンバン人が殺される本を好んで読み漁ってるし……)、本書のなかでは、はっきり不健全なものとして言及されています。
主人公のカーソンや相棒のハリーは、おぞましい品々を求め、飾り、自慢するコレクターらを、〈死〉を集めるコレクター、と嫌悪します。
人が何人も死んでいるのに、その〈死〉を欲望のままに、求め、飾り、消費する、自らの欲望を埋めて飽くことのないその様には、ぞっとするような人の業を感じます。
本書の一連の殺人事件は、人間の際限のない欲望から生まれたと言えるでしょう。
しかし、この業の深さは、彼らだけの特性なのか、と本書は問いかけます。
女性ジャーナリストのダンベリーは、自分こそ事件から事件に飛び回り、人の死をあさるコレクターのようだと術懐し、カーソンも刑事という職業こそ、人の死を集める《
そして、読者も、ふと身の内に住むあさましい欲望に気が付きます。
人の《死》で、あるいは不幸の蜜の味で、酒を飲み飽くことのない自分がいるのではないか。
自分は、欲望に満ちた《
という私も、下世話な噂話に目を輝かせている面が無いとは言えないので、身が縮む思いで読みました。
推理小説の出来としては、1作目のほうが緻密で良かったですが、物語の空間的な広がりや、ストーリーのダイナミックさはこちらのほうが楽しめました。
3作目も楽しみです。
今回ご紹介した本はこちら
既刊・続刊はこちら
第1作目『百番目の男』
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第3作目『毒蛇の園』
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第4作目『ブラッド・ブラザー』
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第5作目『イン・ザ・ブラッド』
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第6作目『髑髏の檻』
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第7作目『キリング・ゲーム』
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