『毒蛇の園』ジャック・カーリイ | 【感想・ネタバレなし】カーソン・ライダーシリーズ第3作。謎めいた富豪一族の周囲に積み重なる死体の山とおぞましい秘密
今日読んだのは、ジャック・カーリイ『毒蛇の園』です。
シリアルキラーを兄に持つ若き刑事・カーソン・ライダーの活躍を描いたシリーズ3作目です。
といっても、今作ではシリアルキラーに兄・ジェレミーは登場しませんでした~。
ただ、エンタメ小説としての完成度は、第1作『百番目の男』に迫るんじゃないかな?、と思いました。
むごい拷問痕の残る死体、殺されたジャーナリスト、医師の遺した謎めいた治療記録、黒い噂の絶えない富豪の一族、もつれる思惑……現代アメリカ版犬神家の一族!って感じでした。
読後、タイトルの意味が腑に落ちました。なるほど、これは確かに毒蛇の園……。
それでは、あらすじと感想を書いていきます。
あらすじ
更に、事件を担当することになった刑事、”僕”ことカーソン・ライダーの目の前で生前、被害者が調査していた受刑者が毒殺される。
積みあがる死体の奥には、モビール有数の富豪一族・キンキャノン家にまつわる黒い噂があった。
おすすめポイント
・海外刑事ドラマが好きな方におすすめです。
・緻密な伏線が張られたサスペンス小説が読みたい方におすすめです。
・”謎めいた富豪一族と不穏な噂”という言葉にソワっとくる方におすすめす。
またしてもガールフレンドがチェンジ!
第1作『百番目の男』かぎりでリストラされたアル中のガールフレンド・アヴァに続き、第2作『デス・コレクターズ』で誕生したばかりの彼女、女性レポーターのディーディーも今作であっさり(?)退場しました。
これが、アメリカでは普通なんでしょうか? 人によるか……。
代わりに、10歳年上の病理学者・クレアといい雰囲気になるのですが、どうせ長くはないんだろうな、と思います。
コミュ強い怖い……。
謎めいた一族
推理小説好きとしては、”謎めいた富豪一族”というワードにはソワっときてしまいます。
本書で登場するのは、モビール市有数の名家・キンキャノン一族です。
母親を頂点に、3人の息子たちが一族をまとめ、特に長男のバック・キンキャノンは甘いルックス、慈善事業にも熱心で、非の打ち所がない男と思われているのですが、何故か一族の周囲には不穏な噂が絶えません。
調べれば調べるほど、一族の周囲にうず高く積まれた死体の山に慄くことになります。
「キンキャノン一族は……そうね、富める者で本当に両手で与えられる人は、まずいないのよ、ライダー」
働かないおじさんと働くおじさん
海外にもこういう人いるんだな、と思ったのですが、退職間近のローガン刑事は経験はあるものの、新しい技術についていけず、ネットさえ使おうとせず、不貞腐れ、何かと言えば、”僕”と相棒・ハリーにつっかかります。
典型的な、”働かないおじさん”で、若い人間のキャリアに何の足しにもならない、と軽蔑されています。
反対に、科学捜査班に新しく加わることになったサディアスは御年70歳近く。
若い時は、アップルとマイクロソフトで活躍し、子どもと孫たちと暮らすためモビール市に移ってきたコンピュータのエキスパートです。
「ここをいつでも忙しくしておく」ために、ボランティアで科学捜査班に協力している、という設定です。
ローガン刑事とサディアスを比較すると、どうしてもサディアスのように年を取りたい、と思ってしまいます。
しかし、そんな読者の考えすら、本書では伏線として利用されます。
サディアスのようになりたい、と思うのはもちろんですが、ローガン刑事のような人間はいくらを見るまなざしも少しだけ変わるかもしれません。
今回ご紹介した本はこちら
既刊・続刊はこちら
第1作目『百番目の男』
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第2作目『『デス・コレクターズ』』
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第4作目『ブラッド・ブラザー』
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第5作目『イン・ザ・ブラッド』
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第6作目『髑髏の檻』
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第7作目『キリング・ゲーム』
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