書にいたる病

ものがたり大好き主婦の読書記録

ミステリ

『闇に香る嘘』下村敦史 | 【感想・ネタバレなし】27年間、兄と信じた男は本当の兄なのか、全盲の老人が手探りであの日本当にあった出来事を追う

今日読んだのは、 下村敦史『闇に香る嘘』です。 第60回江戸川乱歩賞受賞作のこちら。著者の下村敦史さんは9年間同賞に応募し続け、5度最終候補に残り落選を経験した先にやっと勝ち取った受賞だそうです。 この経歴だけでも尊敬してしまいます。 中国残留孤…

『ロシア紅茶の謎』有栖川有栖 |【感想・ネタバレなし】国名シリーズ第1作品集。毒殺された作詞家のカップに毒を入れた驚くべきトリックとは

今日読んだのは、有栖川有栖『ロシア紅茶の謎』です。 1994年刊行で、エラリー・クイーンにならった”国名シリーズ”の第1作品集にあたります。 時代は感じさせるものの、今読んでも粒ぞろいの作品で、本格ミステリ好きには素敵なお菓子箱のような作品集です。…

『菩提樹荘の殺人』有栖川有栖 | 【感想・ネタバレなし】〈若さ〉がもたらす光と闇を書き分ける四つの短編。火村の学生時代のある事件も明かされる

今日読んだのは、 有栖川有栖『菩提樹荘の殺人』です。 2013年に刊行された「作家アリスシリーズ」の長編です あとがきによると、 本書に収録した四編には、〈若さ〉という共通のモチーフがある。 探偵役の火村の学生時代や、有栖の高校生時代の思い出などが…

『スイス時計の謎』有栖川有栖 | 【感想・ネタバレなし】論理パズルのような悪魔的推理が暴露する青春時代に男たちが立てた熱い誓い

今日読んだのは、有栖川有栖『スイス時計の謎 (講談社文庫)』です。 所謂「作家アリスシリーズ」の短編集で、刊行は2003年です。 表題作となっている「スイス時計の謎」は、推理小説というより論理パズルのようで、詐欺師の騙されているのに反論できないよう…

『狩人の悪夢』有栖川有栖 | 【感想・ネタバレなし】狩人とは一体誰だったのか。シリーズの愛読者には嬉しいサプライズが最後に待つ。

今回ご紹介するのは、 有栖川有栖『狩人の悪夢』です。 2017年に刊行された「作家アリスシリーズ」の長編です。 本シリーズは御手洗潔とは異なり、探偵の火村と有栖は年を取らないシステムなので、シリーズ初期では、携帯もなく、ワープロ(!)やフロッピー…

『朱色の研究』有栖川有栖 | 【感想・ネタバレなし】人を狂わせる魔的な夕焼けが支配する。意外な犯人とそこに至る精緻なロジックに驚嘆する本格推理小説。

今回ご紹介するのは、 有栖川有栖『朱色の研究』です。 所謂「作家アリスシリーズ」 の長編で、1997年に刊行されたものです。 バブル崩壊直後の、あ~なんか不景気やな~、という落ち込んだ退廃的な雰囲気と、カミュ『異邦人』を思わせる世界の終わりのよう…

『乱鴉の島』有栖川有栖 | 【感想・ネタバレなし】王道の孤島ミステリ。精緻なロジカルと当時の最先端技術に寄せる著者の倫理的態度が融和する傑作

今回ご紹介するのは、有栖川有栖『乱鴉の島』です。 所謂「作家アリスシリーズ」 の長編にあたり、孤島もののミステリに位置づけられます。 年代が2000年代初頭なので、携帯電話が一般的に普及しはじめたけれど、スマホはもう少し先、パソコンでインターネッ…

『台北プライベートアイ』紀蔚然 | 【感想・ネタバレなし】台湾発のハードボイルド探偵が連続殺人事件を追いかける。この面白さは読まないと分からない!

今回ご紹介するのは、紀蔚然『台北プライベートアイ』です。 原題は『私家偵探』。 台湾人が書く私立探偵小説なんて、面白そうな予感しかしない!とビビっときて、そのまま夢中になって一気に読み上げました。 ジャンルを問われれば、”ハードボイルド”としか…

『おれたちの歌をうたえ』呉勝浩 | 【感想・ネタバレなし】あの日確かに繋がった歌声をおれたちは今に運べるか、昭和と令和を行き来する骨太の大河ミステリー

今回ご紹介するのは、呉勝浩『おれたちの歌をうたえ』です。 昭和51年と令和元年を行き来する骨太のミステリーというかピカレスク。 無邪気であれた幼い日々と残忍な今の容赦のない対比やめまぐるしい展開、暴力描写、圧倒的な物量に押しつぶされそうになり…

『グラスバードは還らない』市川憂人 | 【感想・ネタバレなし】マリア&漣シリーズ3弾!爆破テロによりタワーに取り残されるマリア!透明な迷宮に閉じ込められた4人の男女を襲う惨劇と哀しき硝子鳥の秘密

今回ご紹介するのは、市川憂人『グラスバードは還らない』です。 シリーズ第4作『ボーンヤードは語らない』が2021年6月に発売されるのに合わせ、精緻に編み込まれた本格ミステリである本シリーズの魅力をご紹介したいと思います。 第1作目の感想はこちら↓ ru…

『ブルーローズは眠らない』市川憂人 | 【感想・ネタバレなし】マリア&漣シリーズ第2弾!青いバラ咲き誇る密室には切り落とされた首と縛られた生存者が

今回ご紹介するのは、市川憂人 『ブルーローズは眠らない』です。 シリーズ第4作『ボーンヤードは語らない』が2021年6月に発売されるのに合わせ、精緻に編み込まれた本格ミステリである本シリーズの魅力をご紹介したいと思います。 類まれな美貌と怜悧な頭脳…

『ジェリーフィッシュは凍らない』市川憂人 | 【感想・ネタバレなし】マリア&漣シリーズ第1作目にして第26回鮎川哲也賞受賞作

今回ご紹介するのは、市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』 です。 著者のデビュー作にして、21世紀の『そして誰もいなくなった』と選考委員に絶賛された本格ミステリです。 著者のマリア&漣シリーズの第1作目でもあります。 シリーズ第4作『ボーンヤ…

『私の夫は冷凍庫に眠っている』八月美咲 | 【感想・ネタバレなし】殺したはずの夫が帰ってきた、緊迫感に耐え切れないサスペンス

今回ご紹介するのは、 八月美咲『私の夫は冷凍庫に眠っている (小学館文庫 や 28-1)』です。 人気小説サイト「エブリスタ」発のラブ・サスペンス。 ドラマ化、漫画家して注目を集めました。 www.tv-tokyo.co.jp 殺した夫を冷凍庫に隠したはずなのに、その夫…

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳碧人 | 【感想・ネタバレなし】日本昔ばなし×本格ミステリ、あの童話でミステリが書けるなんて!

青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体がありました。』のあらすじと読書感想を紹介します。ポップな題材と本格ミステリの見事な融合が楽しめます。

『たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説) 』辻真先 | 【感想・ネタバレなし】爽やかに蘇る少年少女らの戦後の青春のひと時と不可解な二つの殺人事件

辻真先『たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説) 』のあらすじと読書感想を紹介します。戦後の青春のひと時を分かち合う仲間との友情と、時代への温かな眼差しが感じられるミステリ。それだけにタイトルの意味が重い。

【12年ぶりの新刊!】名探偵音野順の事件簿シリーズ 北山猛邦 | 【まとめ・ネタバレなし】世界一気弱な名探偵と楽天家の推理小説家の凸凹コンビ

北山猛邦著『名探偵音野順の事件簿シリーズ』は東京創元社から刊行されている推理小説シリーズです。 2021年1月に12年ぶりに待望の新刊が発売されました! 気弱なひきこもりの名探偵・音野順とその友人で推理小説家の白瀬白夜のコンビが活躍します。 いやが…

『匠千暁シリーズ(タック&タカチシリーズ)』西澤保彦 | 【あらすじ・ネタバレなし】刊行順・時系列順、おすすめの順番にまとめてみました

『匠千暁シリーズ(タック&タカチシリーズ)』とは、ミステリ作家西澤保彦のデビュー作『解体諸因』から続くシリーズです。 主に、安槻大学という架空の大学に通う4人の学生を中心とした推理シリーズですが、刊行の順番と、作中の時系列がばらばらであり、…

『深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』辻真先 | 【感想・ネタバレなし】東京と名古屋をまたがる殺人事件に昭和12年を生きる少年探偵が挑む

辻真先『夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』のあらすじと読書感想を紹介します。三冠を達成した『たかが殺人じゃないか』の前日譚。名古屋汎太平洋平和博覧会中に起きた殺人事件に少年探偵が挑む。

『追想五断章 』米澤穂信 | 【感想・ネタバレなし】五つの結末の無い物語が、変貌する真実を語る

米澤穂信『追想五断章 』のあらすじと読書感想を紹介します。平成4年の時代描写と主人公の心情と5つのリドルストーリーにまつわる謎と過去の未解決事件が呼応し合う贅沢な構成の小説です。

『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信 | 【感想・ネタバレなし】最後の一行が密やかな衝撃をもたらす、物語の夢想に魅せられた全ての者に贈られる連作ミステリ

米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』のあらすじと読書感想を紹介します。最後の一文がもたらす衝撃にこだわった連作ミステリ。いつしか、密やかで罪深い世界に引きこまれる。

『Iの悲劇』米澤穂信 | 【感想・ネタバレなし】現実が物語を超える瞬間を目の当たりにする

米澤穂信『Iの悲劇』のあらすじと読書感想を紹介します。地方移住の闇を描く、コロナ禍の今だからこその読み方ができる貴重なミステリです。

『僕たちの正義』平沼正樹 | 【感想・ネタバレ】死んで当然の人間は存在するのか、一人の少女の死から溢れる人間の闇とは

平沼正樹『僕たちの正義』のあらすじと読書感想を紹介します。臨床心理士の主人公が背負う深い業に、自分自身の倫理観が揺らぎそうになりました。

『本と鍵の季節』米澤穂信 | 【感想・ネタバレなし】学校図書室で繰り広げられる、掛け替えのない友人とのほろ苦い青春の日々

米澤穂信『本と鍵の季節』のあらすじと感想を書きました。探偵二人というちょっと変わった構成に、男子高生同士の小気味よい会話の応酬、米澤ミステリらしいビターな持ち味が堪能できました。

『迷宮百年の睡魔 LABYRINTH IN ARM OF MORPHEUS』森博嗣 | 【感想・ネタバレなし】 人間の誇りは、尊厳は、躰と頭脳どちらに宿るのか。美しき女王が再び現れる。百年シリーズの二作目。

森博嗣『迷宮百年の睡魔 』のあらすじとネタバレ感想を書いていきます。 百年シリーズの2作目にして、再び現れる女王とミチルの人間の誇りを巡る尽きぬ議論。神々しいまでの近未来ミステリでした。

『スイッチ 悪意の実験』潮谷験 | 【感想・ネタバレなし】メフィスト賞受賞作 自分以外の他人の破滅を呼ぶスイッチを渡された大学生6人の選択とは

潮谷験『スイッチ 悪意の実験』のあらすじと読書感想を紹介します。破滅的なラストか救済か最後まで読めないドキドキの読書が楽しめます。

『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』青柳碧人 | 【感想・ネタバレなし】赤ずきんが探偵の異色の童話×ミステリ、ねえ、あなたの犯罪計画は、どうしてそんな杜撰なの?

青柳碧人『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』のあらすじと読書感想を紹介します。「ねえ、あなたの犯罪計画は、どうしてそんな杜撰なの?」

『女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN』森博嗣 | 【感想・ネタバレなし】女王が統治する死が存在しない街で、人間の尊厳の在処を宣言される

森博嗣『女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN』のあらすじと読書感想を紹介します。死が限りなく薄まった未来で、生とはどんな価値を持つかを論じた今読んでも新しいミステリでした。

『青年のための読書クラブ』桜庭一樹 【感想・ネタバレなし】乙女よ、青年たるものよ、永遠であれ!

桜庭一樹『青年のための読書クラブ』のあらすじと読書感想を紹介します。乙女よ、青年たるものよ、永遠であれ!

『ゴールデンタイムの消費期限』斜線堂有紀 | 【感想・ネタバレ】元天才児たちが集められた箱庭での本物のゴールデンタイムを描く爽やかな青春小説

斜線堂有紀『ゴールデンタイムの消費期限』のあらすじと読書感想を紹介します。AI×元天才児という異色の青春小説です。希望に満ちた子どもたちの選択が胸を打ちます。

『蒼海館の殺人』阿津川辰海 【感想・ネタバレなし】洪水が迫る館で起こる連続殺人事件、悩める若き探偵に朝はやってくる!

阿津川辰海『蒼海館の殺人』のあらすじと読書感想を紹介します。前作『紅蓮館の殺人』を上回る精緻なミステリに耽溺しました。