書にいたる病

活字中毒者の読書記録

有栖川有栖

『ロシア紅茶の謎』有栖川有栖 |【感想・ネタバレなし】国名シリーズ第1作品集。毒殺された作詞家のカップに毒を入れた驚くべきトリックとは

今日読んだのは、有栖川有栖『ロシア紅茶の謎』です。 1994年刊行で、エラリー・クイーンにならった”国名シリーズ”の第1作品集にあたります。 時代は感じさせるものの、今読んでも粒ぞろいの作品で、本格ミステリ好きには素敵なお菓子箱のような作品集です。…

『菩提樹荘の殺人』有栖川有栖 | 【感想・ネタバレなし】〈若さ〉がもたらす光と闇を書き分ける四つの短編。火村の学生時代のある事件も明かされる

今日読んだのは、 有栖川有栖『菩提樹荘の殺人』です。 2013年に刊行された「作家アリスシリーズ」の長編です あとがきによると、 本書に収録した四編には、〈若さ〉という共通のモチーフがある。 探偵役の火村の学生時代や、有栖の高校生時代の思い出などが…

『スイス時計の謎』有栖川有栖 | 【感想・ネタバレなし】論理パズルのような悪魔的推理が暴露する青春時代に男たちが立てた熱い誓い

今日読んだのは、有栖川有栖『スイス時計の謎 (講談社文庫)』です。 所謂「作家アリスシリーズ」の短編集で、刊行は2003年です。 表題作となっている「スイス時計の謎」は、推理小説というより論理パズルのようで、詐欺師の騙されているのに反論できないよう…

『狩人の悪夢』有栖川有栖 | 【感想・ネタバレなし】狩人とは一体誰だったのか。シリーズの愛読者には嬉しいサプライズが最後に待つ。

今回ご紹介するのは、 有栖川有栖『狩人の悪夢』です。 2017年に刊行された「作家アリスシリーズ」の長編です。 本シリーズは御手洗潔とは異なり、探偵の火村と有栖は年を取らないシステムなので、シリーズ初期では、携帯もなく、ワープロ(!)やフロッピー…

『朱色の研究』有栖川有栖 | 【感想・ネタバレなし】人を狂わせる魔的な夕焼けが支配する。意外な犯人とそこに至る精緻なロジックに驚嘆する本格推理小説。

今回ご紹介するのは、 有栖川有栖『朱色の研究』です。 所謂「作家アリスシリーズ」 の長編で、1997年に刊行されたものです。 バブル崩壊直後の、あ~なんか不景気やな~、という落ち込んだ退廃的な雰囲気と、カミュ『異邦人』を思わせる世界の終わりのよう…

『乱鴉の島』有栖川有栖 | 【感想・ネタバレなし】王道の孤島ミステリ。精緻なロジカルと当時の最先端技術に寄せる著者の倫理的態度が融和する傑作

今回ご紹介するのは、有栖川有栖『乱鴉の島』です。 所謂「作家アリスシリーズ」 の長編にあたり、孤島もののミステリに位置づけられます。 年代が2000年代初頭なので、携帯電話が一般的に普及しはじめたけれど、スマホはもう少し先、パソコンでインターネッ…