書にいたる病

ものがたり大好き主婦の読書記録

『わるい食べもの』千早茜 | 【感想】新進気鋭の女性作家が旺盛に語る食・食・食!

今回ご紹介するのは、千早茜わるい食べもの (ホーム社)』です。

デビュー作で小説すばる新人賞泉鏡花文学賞をダブル受賞した『魚神』を読んで以来、なんとな~く読まずに来ていた作家さんなのですが、こちらのエッセイで驚くほど自分との共通点があることが分かり、親近感が(勝手に)爆上がりしました。

しばらくは、集中的に読もうかな、と思っています。

それでは、感想を書いていきます。

あらすじ

北海道で生まれ、小学生時代をザンビアで過ごし、29歳で『魚神』で鮮烈なデビューを果たした著者が綴る食への飽くなき想い。
「おいしい」には裏がある。
医療事務時代、手術風景を眺めながら食べたおにぎり。おやしらずを抜いた後の濃い血の味。生卵の生々しい生命の手触りへの恐怖、チョコレートへの恍惚的愛情。
時に美味に、時にグロテスクに、「食」という生命活動を力強く語るエッセイ。 

おすすめポイント 

ただの食レポ的エッセイには飽き飽きだ!と思っている方におすすめです。

旺盛な食欲にまず驚き、ドライでクールに見えながら、妙なところでこだわりを見せる器用なのか不器用なのか分からない著者の言動に、くすりと笑ってしまうエッセイです。

なるべくネタバレしないようにしますが、気になる方はご注意ください。 

自分との共通点の多さに驚く

著者の本を実はほとんど読んだことがなかったのですが、このエッセイを読んで自分との接点の多さに驚きました。

まず、京都在住ということ!

私は、色々あって現在京都に住んでいないのですが、著者が立命館大学で学んでいたことや、最近まで私も京都に住んでいたことを合わせて考えると、かなりの期間、同じ土地に住んでいたことになります。

そして、京都市に住んでいる人間の行動範囲は結構狭いので、じゃあどこかでニアミスしていたのかも!、と興奮しました。

特に、バレンタインデーには、エッセイ同様、デパートのチョコレート戦線に私も参戦していたので(著者ほどの情熱はありませんでしたが……)、どこかで絶対ニアミスしてた!と大興奮しています。

まあ、Coccoの歌っている『お菓子と娘』という歌が好きなことも一緒!(「きらきら」というアルバムに収録されています)。

ちひろさん』という漫画の休日カレーに魅せられていることも一緒!

小川洋子『シュガータイム』の真夜中にパウンドケーキを焼くシーンが好きなことも一緒!

果物は自分で剥きたい、カットフルーツが苦手というところも一緒!

ぼーっとしているとき、周りからは何かを凝視しているように見えていて、人から気味悪がられた経験があることも一緒!

という、超個人的に共感してしまうエッセイでした。

まあ、こちらが幾ら共通点を見つけて喜んでいても、あんまり意味ないというか著者からしたら気味悪いでしょうが……。

でも、「酔いの夜道」に登場する担当T嬢の、

「酔ってラーメンって、二十代男子の都市伝説じゃないかと思います」

には、完全に反論したいです! 私は飲んだ後、めちゃくちゃラーメン食べたくなります。一晩で店を変えて2杯食べたこともあります! 都市伝説じゃありません!

でもでも、「ガリボリ系」に書かれている日本のグルメ番組は「やわらかい」に傾倒しすぎ、という意見には全くもって同意

「とろとろ~」「ふわふわ~」とうっとりするようなグルメ番組だけではなく、「ものすごい歯ごたえです!」「噛んでも嚙んでも終わらない気がします!」「私、もう顎が限界です!」とリポーターが顔をゆがめながら食すグルメ番組があればいいなと期待しているが、なかなか叶わない。

ここで思わず笑ってしまいました。そんな番組見てみたい。

十分色っぽいですよ

最後のほうの『食べちゃいたい』という章で、このエッセイのことを「色気がない……。」と独白していらっしゃいますが、これは意外でした。

全然!色っぽいですよ!

読み始めから、生々しいというか、官能的に食べ物を書く方だな~、と思っていました。

たぶん、著者の食への向き合い方が、体当たり的というか、バーバリアン的というか、食べること、排泄、生殖行動、性愛、雑多な諸々の生命活動が地続きになっているところに立っている、という印象があります。

それが、色気をなくさせるかというと全然そうでなく、逆に同性の親友の裸を改めてまじまじと見てしまうような変な背徳感がありました。

このエッセイの続きの『しつこく わるい食べもの』も読んでみようと思います。

今回ご紹介した本はこちら

 

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