書にいたる病

活字中毒者の読書記録

『たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説) 』辻真先 | 【感想・ネタバレなし】爽やかに蘇る少年少女らの戦後の青春のひと時と不可解な二つの殺人事件

辻真先『たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説) 』のあらすじと読書感想を紹介します。戦後の青春のひと時を分かち合う仲間との友情と、時代への温かな眼差しが感じられるミステリ。それだけにタイトルの意味が重い。

名探偵音野順の事件簿シリーズ 北山猛邦 | 【まとめ・ネタバレなし】世界一気弱な名探偵と楽天家の推理小説家の凸凹コンビ

北山猛邦著『名探偵音野順の事件簿シリーズ』は東京創元社から刊行されている推理小説シリーズです。 2021年1月に12年ぶりに待望の新刊が発売されました! 気弱なひきこもりの名探偵・音野順とその友人で推理小説家の白瀬白夜のコンビが活躍します。 いやが…

『しつこく わるい食べもの』千早茜 | 【感想】『わるい食べ物』 の続編エッセイ、コロナ禍のなかで食を愛する小説家は何を見て何を考えたか

千早茜『しつこく わるい食べもの』のあらすじと読書感想を紹介します。コロナの流行により、飲食店は自粛営業、食を愛する者として、小説家として、著者の生の声が聞こえる一冊です。

『匠千暁シリーズ(タック&タカチシリーズ)』西澤保彦 | 【あらすじ・ネタバレなし】刊行順・時系列順、おすすめの順番にまとめてみました

『匠千暁シリーズ(タック&タカチシリーズ)』とは、ミステリ作家西澤保彦のデビュー作『解体諸因』から続くシリーズです。 主に、安槻大学という架空の大学に通う4人の学生を中心とした推理シリーズですが、刊行の順番と、作中の時系列がばらばらであり、…

『ひきなみ』千早茜 | 【感想】どれだけ傷めつけられても、脅かされないものがある

千早茜『ひきなみ』のあらすじと読書感想を紹介します。2人の少女の深い繋がりと、それがもたらす痛み。生きることの苦しみの果てに残る光が、新しい道をひらく。

『深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』辻真先 | 【感想・ネタバレなし】東京と名古屋をまたがる殺人事件に昭和12年を生きる少年探偵が挑む

辻真先『夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』のあらすじと読書感想を紹介します。三冠を達成した『たかが殺人じゃないか』の前日譚。名古屋汎太平洋平和博覧会中に起きた殺人事件に少年探偵が挑む。

『オーバーロードの街』神林長平 | 【感想・ネタバレ】人間よ、人間をやめよ、〈地球の意思〉が人類に宣告する黙示録的SF

神林長平『オーバーロードの街』のあらすじと読書感想を紹介します。地球の意思が人間に告げる、人間よ、人間であることをやめよ。そして大災厄が訪れる。

『オービタル・クラウド』藤井太洋 | 【感想・ネタバレなし】スペーステロに日本のWebエンジニアが挑む、胸が熱くなるようなSF大作

藤井太洋『オービタル・クラウド』のあらすじと読書感想を紹介します。第46回星雲賞、第35回SF大賞受賞の著者の代表作、一人の技術者の小さな発見が大きな渦を巻き起こす。

『わるい食べもの』千早茜 | 【感想】新進気鋭の女性作家が旺盛に語る食・食・食!

千早茜『わるい食べもの』のあらすじと読書感想を紹介します。旺盛な食欲と飽くなき探求心、クールで情熱家な著者の素顔が垣間見える食エッセイ。

『追想五断章 』米澤穂信 | 【感想・ネタバレなし】五つの結末の無い物語が、変貌する真実を語る

米澤穂信『追想五断章 』のあらすじと読書感想を紹介します。平成4年の時代描写と主人公の心情と5つのリドルストーリーにまつわる謎と過去の未解決事件が呼応し合う贅沢な構成の小説です。

『西洋菓子店プティ・フール』千早茜 | 【感想】日常は甘いことだけじゃない、でも、スイーツはいつも寄り添ってくれる

千早茜『西洋菓子店プティ・フール』のあらすじと感想を紹介します。スイーツをめぐる、甘く酸っぱく、ときにほろ苦い人間模様を六つの連作短編が描きます。

『白鯨 MOBY-DICK』夢枕獏 | 【感想・ネタバレなし】ジョン万次郎が拾われた船が"あの船"だったら…史実と文学、歴史と虚構が交錯する巨編

夢枕獏『白鯨 MOBY-DICK』のあらすじと読書感想を紹介します。史実と文学が奇跡のように融合する巨編。著者のストーリーテラーとしての凄まじい才能を再認識する一冊です。

『本のエンドロール』安藤祐介 | 【感想】一冊の本がつくられるまでの無数の仕事人たちの熱き情熱

安藤祐介『本のエンドロール』のあらすじと読書感想を紹介します。本の奥付の向こうに隠れた、一冊の本を”つくる”人々が奏でる熱きお仕事小説。

『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信 | 【感想・ネタバレなし】最後の一行が密やかな衝撃をもたらす、物語の夢想に魅せられた全ての者に贈られる連作ミステリ

米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』のあらすじと読書感想を紹介します。最後の一文がもたらす衝撃にこだわった連作ミステリ。いつしか、密やかで罪深い世界に引きこまれる。

『Iの悲劇』米澤穂信 | 【感想・ネタバレなし】現実が物語を超える瞬間を目の当たりにする

米澤穂信『Iの悲劇』のあらすじと読書感想を紹介します。地方移住の闇を描く、コロナ禍の今だからこその読み方ができる貴重なミステリです。

『物語を忘れた外国語』黒田龍之助 | 【感想】物語と言語との間を自由に飛び回る著者の遊戯三昧の読書記

黒田龍之助『物語を忘れた外国語』のあらすじと読書感想を紹介します。まるで目の前で喋ってくれているかのようなユーモラスな口調で語られる、自由で豊かな物語と言語との関係。

『東京の子』藤井太洋 | 【感想】オリンピック開催されていたはずの2023年の東京を失踪する若者たちをクールに描きだす

藤井太洋『東京の子』のあらすじと読書感想を紹介します。ドライな未来を描いているようで、熱い希望をどこかに潜ませてくれている藤井太洋ならではの近未来小説です。

『僕たちの正義』平沼正樹 | 【感想・ネタバレ】死んで当然の人間は存在するのか、一人の少女の死から溢れる人間の闇とは

平沼正樹『僕たちの正義』のあらすじと読書感想を紹介します。臨床心理士の主人公が背負う深い業に、自分自身の倫理観が揺らぎそうになりました。

『本と鍵の季節』米澤穂信 | 【感想・ネタバレなし】学校図書室で繰り広げられる、掛け替えのない友人とのほろ苦い青春の日々

米澤穂信『本と鍵の季節』のあらすじと感想を書きました。探偵二人というちょっと変わった構成に、男子高生同士の小気味よい会話の応酬、米澤ミステリらしいビターな持ち味が堪能できました。

『迷宮百年の睡魔 LABYRINTH IN ARM OF MORPHEUS』森博嗣 | 【感想・ネタバレなし】 人間の誇りは、尊厳は、躰と頭脳どちらに宿るのか。美しき女王が再び現れる。百年シリーズの二作目。

森博嗣『迷宮百年の睡魔 』のあらすじとネタバレ感想を書いていきます。 百年シリーズの2作目にして、再び現れる女王とミチルの人間の誇りを巡る尽きぬ議論。神々しいまでの近未来ミステリでした。

『スイッチ 悪意の実験』潮谷験 | 【感想・ネタバレなし】メフィスト賞受賞作 自分以外の他人の破滅を呼ぶスイッチを渡された大学生6人の選択とは

潮谷験『スイッチ 悪意の実験』のあらすじと読書感想を紹介します。破滅的なラストか救済か最後まで読めないドキドキの読書が楽しめます。

『アンダーグラウンド・マーケット』藤井太洋 | 【感想】仮想通貨が創る巨大な地下経済圏に生きるフリーな若者たち、あったかもしれない今が描かれる近未来小説

藤井太洋『アンダーグラウンド・マーケット』のあらすじと読書感想を紹介します。アングラな地下経済圏を生きる若者たちの姿をスピーディーな快感と共に描く、あったかもしれない現在の物語です。

『ファミリーポートレイト』桜庭一樹 | 【感想】母と娘の呪いのような愛憎、物語ることの渇望

桜庭一樹『ファミリーポートレイト』のあらすじと読書感想を紹介します。最後のシーンは、この世の母と娘の幸福な、そして失われた一瞬の時間に、祈りを捧げたくなるものでした。

『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』青柳碧人 | 【感想・ネタバレなし】赤ずきんが探偵の異色の童話×ミステリ、ねえ、あなたの犯罪計画は、どうしてそんな杜撰なの?

青柳碧人『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』のあらすじと読書感想を紹介します。「ねえ、あなたの犯罪計画は、どうしてそんな杜撰なの?」

『ヒールをぬいでラーメンを』栗山圭介 | 【感想】失恋・失職のどん底OLがラーメン道をひた走る。勇気づけられるお仕事小説。

栗山圭介『ヒールをぬいでラーメンを』のあらすじと読書感想を紹介します。飲食店経営だけでなく、夢にチャレンジする全ての人に贈られた元気いっぱいの小説でした。

『女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN』森博嗣 | 【感想・ネタバレなし】女王が統治する死が存在しない街で、人間の尊厳の在処を宣言される

森博嗣『女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN』のあらすじと読書感想を紹介します。死が限りなく薄まった未来で、生とはどんな価値を持つかを論じた今読んでも新しいミステリでした。

『夢見る帝国図書館』中島京子 | 【感想】ゆめみるものたちの楽園 真理がわれらを自由にするところ

中島京子『夢見る帝国図書館』のあらすじと読書感想を紹介します。戦後を生きた女性の数奇な人生と、日本ではじめての図書館の時局に翻弄された歴史が響き合い力強い物語となって読者い響きます。

『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ | 【感想】2019年本屋大賞受賞作、血のつながらない家族のいとも幸福な日々に涙溢れる

瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』のあらすじと読書感想を紹介します。親になることは、明日が二つになること、というセリフが印象的。

『少年の名はジルベール』竹宮惠子 | 【感想】少女漫画の常識を覆した革命家的漫画家の自伝的エッセイ

竹宮惠子『少年の名はジルベール』のあらすじと読書感想を紹介します。伝説の少女漫画家が綴る、物語より心熱くなる自伝エッセイです。

『この本を盗む者は』深緑野分 | 【感想・ネタバレなし】 本を読むという永遠の呪いにかけられた人間が一度は読むべき物語

深緑野分『この本を盗む者は』のあらすじと読書感想を紹介します。本にまつわる不可思議な呪いを描く、2021年本屋大賞では10位の快作。